太陽系に良く似た構成の惑星系を発見

 この度、名古屋大学太陽地球環境研究所の村木名誉教授、伊藤教授を中心とするMOAグループは、μFUN、OGLE、PLANETグループ等、各国観測チームとの共同観測で、重力マイクロレンズ現象による星の増光現象を観測した結果、我々の太陽系と非常に良く似た惑星系を発見しました。この惑星系は2個の系外惑星を持ち、我々太陽系の太陽、木星、土星の重さと軌道をちょうど半分に縮小した様な格好をしています。この研究成果は、平成20年2月15日発行の米国科学雑誌Scienceに掲載されます。同研究チームは、2年前にも「地球の5倍程度の重さを持つ太陽系外惑星」を発見していますが、これに続く大きな発見となります。

 1992年に初めて太陽系以外の惑星(系外惑星)が発見されてから、これまでに250個以上の系外惑星が発見されており、今や天文学で最も活発な分野の一つとなりました。これらのほとんどは、惑星が恒星の周りを回る反動でその恒星自身が“ふらつく”ところをとらえる「視線速度法」により見つかっています。この方法では、惑星が重くその公転半径が小さいほど(主星の近くを回るほど)感度があります。したがって、これまで発見された系外惑星は、木星のような巨大ガス惑星が主星の近く(例えば太陽系での水星より内側)を高速で回っているという、我々の太陽系とは似ても似つかない物ばかりでした。果たしてこのような惑星系が、宇宙での一般的な惑星系の姿なのでしょうか?

 一方、我々MOAグループを含む国際共同観測ネットワークは、重力マイクロレンズと言う方法で系外惑星の探索に取り組んできました。この現象は、アインシュタインの一般相対性理論が予言する「光が重力によって曲がる」と言う性質のために起こります。ある星の前を偶然別の星が横切るとその星の重力によって背後の星からの光は曲げられて、レンズの様な働きをして集光し、突然明るくなった様に見えます(増光現象)。普通の星がレンズとなると20日程度の間に、単調に明るくなって、また同じ早さで元の明るさに戻っていきます。しかし、もしこの星の周りに惑星があると、その惑星の重力の影響で単調でない増光が余分に加わります。この余分な増光を見つける事によって、そこに惑星がある事が分かります。この方法では、従来の方法では発見できない様な地球程度の重さの軌道半径の大きな系外惑星まで発見する事が出来ます。

 重力マイクロレンズは非常に稀な現象で、100万個の星を見て1個起こる程度です。さらに、この中で系外惑星が発見される確率はそれらの1%程度と非常に小さいので、数千万個の星を毎晩モニターしなければなりません。増光現象はいつどの場所で起こるか予測できないので、広い範囲をモニターして増光を見つけて警報を発信するグループ(OGLEや我々MOAグループ)と、警報を受けて世界各地で詳細な追観測をするグループ(μFAN、PLANETグループ等)で役割を分担しています。このような国際共同観測ネットワークの元、2003年には初めて重力マイクロレンズで系外惑星を発見、2005年には地球の5.5倍と当時最も小さい系外惑星を発見し、現在まで4例の系外惑星が見つかっています。我々MOAグループは、1995年からニュージーランドのMt.John天文台の61cm望遠鏡で重力マイクロレンズによる系外惑星探査を行ってきました。2005年には同天文台に1.8m広視野望遠鏡を建設し、翌年4月から定常観測を開始し(MOA-II)、OGLEグループと共に世界中に増光警報を発信しています。同時に既存61cm望遠鏡に改造を施して、追観測専用として運用しています。今回の成果では、この追観測用61cm望遠鏡が活躍しました。

 今回の発見は、重力マイクロレンズによる方法では初めて見つかった複数の惑星を持つ例です。2006年3月28日、OGLEグループから、重力マイクロレンズ事象OGLE-2006-BLG-109に惑星と思われる微かな信号を発見したと連絡がありました。ただちにMOAを含む世界中の11台の望遠鏡が追観測を開始し、4月5日に惑星の影響による明るさの変化が捉えられ、4月6日には最大光度に達しました。すぐにデータ解析が行われ、問題の惑星の質量は木星程度で、その影響により4月8日に再び増光が起こるだろうと予測がされました。まさに予測どおり4月8日に再度増光が観測されましたが、4月6日の最大光度から減光した直後に予期せぬ別の増光が観測されていました。これが2個目の系外惑星の影響によるものだったのです。

 この複雑な増光現象を解析した結果、我々から5千光年の距離にある太陽の半分の重さの恒星と、その周りに地球の軌道半径の2.3倍、4.6倍の距離で周回するそれぞれ木星の0.71倍、0.27倍の質量の2個の系外惑星が発見されました。これは、内側の惑星の質量が主星の約1/740(木星は太陽の1/1000)、外側の惑星の質量は内側の惑星の1/3(土星は木星の1/3)、さらに、外側惑星の軌道半径は内側惑星の倍(土星の軌道半径は木星の倍)と、我々の太陽系をそのまま縮小した構成となっています。さらに、今回見つかった2つの系外惑星は木星/土星より主星に近いが、主星が太陽より暗いのでそれぞれ-191℃、 -214℃程度で、木星/土星の温度より30%小さいだけです。いろいろな面で非常に我々の太陽系に近い惑星系が発見されたと言えるでしょう。重力マイクロレンズにより発見された系外惑星系はまだ5例目に過ぎませんが、2個のガス惑星がひとつの惑星系で発見され、しかもそれが我々太陽系の木星/土星の持つ性質にそっくりであったということは、偶然でしょうか?

 現在一般的に受け入れられている惑星形成理論では、巨大ガス惑星は温度が十分低い外側で形成されると予想されています。そこでは岩石のコアに水蒸気が氷となって凝縮して惑星が成長しやすいからです(太陽系では、木星より内側には水星、金星、地球、火星等小型の岩石惑星のみ)。惑星の成長は内側の方が早いので、内側の方が大きな惑星が出来ます。(木星は土星より大きい)。これまでに惑星を複数持つ系が25個発見されていますが、2個を除いて殆どが軌道半径が非常に小さいガス惑星を持っていたり、外側惑星の方が重たかったりと太陽系とはかけ離れていました。

 今回発見した惑星系は、これまで見つかった系外惑星の中でもっとも太陽系に近い物と言えます。 重力マイクロレンズで初めて見つかった複数惑星系が太陽系に似た系であったと言う事は、このような系はけっこうありふれた存在でありそうです。このことは、生命の存在できる地球型惑星を持つ惑星系の存在確率を知る上で、ひとつのヒントになるかもしれません。

原論文

“Discovery of a Jupiter/Saturn Analog with Gravitational Microlensing”

B.S.Gaudi et al, Science 15-Feb, 2008

本研究成果を発表した国際共同観測研究チームについて

 参加国:日本、ニュージーランド、米国、ポーランド、オーストラリア、フランス、英国、イタリア、韓国、チリ、イスラエル(11カ国)、

の69名が参加する、以下の5つの研究グループによる共同研究論文

・  MOA ( Microlensing in Astrophysics :モア) グループ

参加国:2カ国 日本(名古屋大学、甲南大学 他全4機関)、ニュージーランド(オークランド大学、カンタベリー大学、マッセイ大学 他全4機関)

・  OGLE (Optical Gravitational Lensing Experiment:オーグル) グループ

・  μFUN ( マイクロファン )グループ

・   PLANET ( プラネット )グループ

・   RoboNet( ロボネット )グループ


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