特別経費事業(全国共同利用・共同実施分)
太陽極大期における宇宙嵐と大気変動に関する調査研究
名古屋大学太陽地球環境研究所

事業期間:平成22年度~平成27年度(6年)
名古屋大学太陽地球環境研究所では、平成22-27年度の6年間に、特別経費による大型事業(全国共同利用・共同実施分)として、「太陽極大期における宇宙嵐と大気変動に関する調査研究」を展開しています。このページでは、この事業の内容を解説します。

太陽からの電磁放射と物質放出の変動は、地球周辺の宇宙(ジオスペース)環境の変動を引き起こすとともに、地球環境へも無視できない影響を与えます。図1に示すように、太陽活動は約11年周期で変動しており、本事業が実施される期間は太陽活動の極大期に相当します。この期間には、通信障害や宇宙機の故障を引き起こす宇宙嵐が頻発し、それに伴うジオスペースの環境変動機構を解明することが緊急に必要とされています。さらに、オゾン層破壊や地球温暖化など人的原因による地球環境の変化が問題になる一方で、人的影響を正しく評価するためにもエネルギー源である太陽活動の変化が地球の環境に及ぼす影響を理解する重要性が指摘されています。この事業では、4つの共同研究プロジェクトを通して、宇宙嵐にともなう粒子加速・輸送機構と、太陽活動変動が地球大気に与える短期・長期的影響を明らかにしていくことを目標としています。

Courtesy of NOAA/Space Environment Center
図1.1965-2020年の太陽黒点数の変化。2009年以降は2種類の予測値を参考のために示す。

本事業の研究領域
本事業の研究領域は、図2に示すように太陽から地球大気までの広い領域にわたる。本事業では、これらの領域を計測するための大型装置群の導入を目指す。
図2.本事業の研究領域(左)と、対応する大型装置(右)。
 
4つの研究プロジェクトについて

以下に、本事業で走る4つの分野横断型の共同研究プロジェクトを説明します(タイトルをクリックすると各プロジェクトの詳細図が見られます)。

プロジェクト1: 特異な太陽活動周期における太陽圏3次元構造の変遷と粒子加速の研究
プロジェクトリーダー:徳丸宗利(太陽圏環境部門・教授)
 現在、太陽活動は長期にわたって無黒点状態が続いていますが、これは過去50年間で最長であり、今後第24活動周期の極大期にかけて予想される太陽圏の構造変化も、従来のものと大いに異なる可能性が高いです。本プロジェクトでは、世界初の惑星間空間シンチレーション(IPS)と高エネルギー粒子の戦略的地上観測網を核として、この太陽圏構造の変遷を明らかにするとともに、極大期に多く発生することが期待される宇宙嵐(太陽風擾乱や粒子加速)を動的かつ大局的に解明します。
【年度報告書】 H22 H23 H24 H25 H26

プロジェクト2: グローバル地上・衛星観測に基づく宇宙プラズマ-電離大気-中性大気結合の研究
プロジェクトリーダー:塩川和夫(電磁気圏環境部門・教授)
このプロジェクトでは、地上観測を有機的に結合させてネットワーク化することにより、地球周辺の宇宙プラズマ-電離大気-中性大気間の結合過程とその間のエネルギー・物質のやりとりを研究します。また、長期モニタリングが可能な地上観測の特性を生かして、極大期・極小期を包括する長期的な観測を行い、太陽活動が地球に与える影響を定量的に明らかにしていきます。
【年度報告書】 H22 H23 H24 H25 H26

プロジェクト3: 太陽活動の地球環境への影響の研究
プロジェクトリーダー:増田公明(太陽圏環境部門・准教授)
このプロジェクトでは、 (1)宇宙線生成核種による過去の太陽活動の詳細解明,(2)極域における太陽活動による大気組成変動の観測的研究(現代の観測による太陽活動の影響の検証),(3)太陽活動変動と大気化学反応過程(成層圏~熱圏の化学成分の短波長UVによる光化学過程に関する室内実験),(4)宇宙線の地球環境への影響の検証というサブテーマを設定し,太陽活動が地球環境へ及ぼす影響の評価を確立し,過去から現在に至る地球環境の変遷を理解します。
【年度報告書】 H22 H23 H24 H25 H26

プロジェクト4: 第2期実証型ジオスペース環境モデリングシステム(GEMSIS-phase II):宇宙嵐に伴う多圏間相互作用と粒子加速の解明に向けて
プロジェクトリーダー:関華奈子(総合解析部門・准教授)
太陽活動極大期に頻発する宇宙嵐は、太陽から地球上層大気までの広い範囲で領域間相互作用が強まることにより生じる大規模な宇宙環境変動現象です。このプロジェクトでは、太陽、磁気圏、電離圏の3つのコアチームを中心に、ジオスペースにおける各領域での実証型モデルを構築し、宇宙嵐時に強く発動する多圏間相互作用と高エネルギー粒子生成・消滅を担う物理機構の解明を目指します。
【年度報告書】 H22 H23 H24 H25 H26

 
本事業による全国共同利用
 全国共同利用研究所である太陽地球環境研究所はこれまで、所外の研究者を半数以上含んだ共同利用・共同研究委員会のもとで、共同研究、研究集会、データベース共同利用、計算機共同利用を年140-150件実施し、当該分野の国内の研究の発展を支援してきました。図3に示すように、本事業では、太陽地球環境研究所の4人の教員をリーダーとして4つの分野横断型プロジェクトを作って太陽から地球までの広い領域にわたる研究をリードするとともに、既存の共同研究事業に加え、新たに大型共同研究枠を導入し、他大学と共同してジオスペースや大気変動の地上ネットワーク観測を展開します。さらに、サイエンスセンター機能を整備して、多様な観測データを、数値モデルを介してつなぐ総合解析ツールを全国の研究者に提供します。
図3.共同利用、分野横断型プロジェクト、大型共同研究、サイエンスセンター機能の関係
 

本事業で新たに導入するサイエンスセンター機能では、図4のように、さまざまな人工衛星観測・地上観測、シミュレーション・モデリングを統合し、異なるデータを1つのツールで効率的に解析することが可能となる統合解析ツールを開発、提供します。さらに、これらの開発成果を生かして、JAXA宇宙科学研究本部と協力し、人工衛星プロジェクト「ひので」や「ERG」の統合解析ツールの提供も行います。

図4.サイエンスセンター機能の詳細

 


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