名古屋大学太陽地球環境研究所

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所長からのメッセージ

 太陽地球環境研究所長 町田 忍

 私たちが住む惑星は宇宙に浮かぶ奇跡の天体です。地球を奇跡の天体とならしめている要素である、太陽と地球、その間の宇宙空間の構造とダイナミックな変動について、名古屋大学太陽地球環境研究所は研究を行っています。当研究所は、宇宙科学と地球科学双方に跨る日本で唯一の全国共同利用研究所です。

 皆さんご存知のように、地球は太陽の周りを公転していますが、太陽は、地球システムを駆動する大部分のエネルギーを供給しており、可視光や紫外線などの電磁波あるいはプラズマ粒子(電子・イオン)を絶えず放出しています。しかし、その太陽は、さまざまな時間スケールで常に変動しています。太陽面で起きるフレアーやコロナ質量放出などの短時間の爆発的な現象は、地球で起きる電磁的な現象と密接に関連しています。例えば、地球の磁気嵐を引き起こしたり、高エネルギー粒子を放出して人工衛星の機能障害をもたらしたり、船外で活動する宇宙飛行士を放射線被曝させてしまうことが知られています。また、黒点数の変化を伴う11年周期の変動や、さらに長い周期を持った変動も知られています。後者については、それに対応して地球の平均気温が変化することも見出されています。これらの変動を理解するためには、太陽の表面のみならず、その内部や外部の周辺領域について精査する必要があります。

 太陽から放出されるプラズマ粒子の流れは太陽風と呼ばれています。太陽風が地球の近傍にやって来ると、地球の磁場の影響を受け、地球から出た磁力線を包み込みながら夜側に流れていきます。その地球から出た磁力線が詰まった領域が磁気圏です。磁気圏の中には様々な電流が流れていますが、その一部は(地球の大気が電離されて電流の流れやすくなった)電離圏と呼ばれる領域に流れ込み、その中を流れて、再び、磁気圏に戻ります。その過程に伴って、オーロラが発生します。また、磁気圏の中には、いろいろなエネルギーのプラズマ粒子が存在していて、特に、地球の周囲をドーナツ状に取り巻くエネルギーの高い粒子で構成される領域は放射線帯と呼ばれています。先ほど説明した太陽フレアーやコロナ質量放出が発生すると、オーロラが活動的になったり、放射線帯が発達します。放射線帯が発達した際にも、人工衛星の機能に障害を与えたり、航空機の乗員を放射線被曝させる可能性が高まります。そのため、太陽フレアーやコロナ質量放出の発生、磁気嵐、放射線帯の発達などを予測する試みがなされています。これは、宇宙天気予報と呼ばれますが、それが実現できれば、事前に衛星の機器の電源を切ったり、航空機の運行ルートや予定を変更するなどの措置をとることによって、深刻な事故を防止することができます。

 一方、太陽から放出されるX線や波長の短い紫外線は、私たちにとって有害ですが、電離圏やオゾン層などの地球の超高層・中層大気がそれらの殆どを吸収して地上に届くのを防ぐ役割を担っています。また、可視光や波長の長い紫外線も、大気を通過する途中で吸収あるいは反射され、一部が地表に到達します。その過程は温室効果と深く関わっていて、地球の表層のエネルギー収支を考える上で重要です。その際、二酸化炭素などの温室効果ガスやエアロゾル、さらにそれを核として形成される雲が重要な要素になってきます。

 雲の形成には宇宙線が重要な働きをしている可能性も指摘されているため、地球を取り巻く空間で起こる現象のみならず、宇宙の彼方で起こる物理過程も当研究所の重要な研究テーマです。このように、太陽から地球までを一つの系(複合系)として理解すること、その中で起きる基本的な物理・化学素過程を、様々な時間・空間スケールで理解することが当研究所のミッションです。当研究所の研究領域は、太陽と地球、その間の宇宙空間にとどまらず、他の惑星や太陽圏全域、さらに、系外惑星、銀河宇宙などにも広がりつつあります。

 ここまで、説明してきましたように、私たちの生活する地球は、さまざまな仕組みにより成り立っている奇跡ともいえる天体です。その天体にとって、私たち人類の出現は、地球の環境を大きく変容させる出来事でした。現代人(ホモサピエンス)の齢は、地球の誕生から今日までの時間を一日と仮定しますと、僅か2秒ほどの時間ですが、特に、産業革命後の文明の目覚しい発達は、私たちの生活を豊かにする一方で、生存環境を脅かす事態を発生させています。この奇跡の天体を守るため、太陽と地球、宇宙の間に存在する仕組みを探求して、環境変動の理解や予測に役立てる研究は、科学の進歩が目覚ましい今日において、益々重要性を高めるものと思われます。

 研究所で行われる最先端の研究とそこから生み出される成果は、人類共通の知的財産です。教育現場で生きた教材として利用していただくとともに、一般の方々に知っていただくことは、研究所の果たすべき役割の一つであると考えております。本ホームページでは、研究教育時活動で得られた最新の成果を「研究部門」等で報告するとともに、代表的な研究項目について「一般向けコーナー」で、よりわかりやすく説明しています。ホームページをご覧になって、少しでも、私たちの研究に興味をもっていただければ幸いです。

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