名古屋大学太陽地球環境研究所

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新学術領域研究「太陽地球圏環境予測」が始動

 本研究所副所長の草野完也教授を領域代表者とする全国的な研究プロジェクト「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成」が、平成27年度文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究(研究領域提案型)」として採択され、始動しました。

1)本領域研究の背景fig-1.gif
 過去半世紀に亘り人類の宇宙進出は急速に進み、今やその探査領域は太陽系全体に広がりつつあります。その結果、太陽と宇宙空間の変動は地球の気候や人間社会にも影響を与えることが分かってきました。例えば、1859年に英国の天文学者キャリントンが発見した強力な太陽面爆発(フレア)と、それに伴う超高速のコロナ質量放出(CME)及び巨大磁気嵐等(キャリントン・イベント)がもし現在起きた場合、電力、衛星、航空、通信ネットワークは前例の無い致命的な打撃を全地球的に受けると考えられています。さらに、最新の恒星観測や樹木年輪の解析によって、これを大きく上回る事象が起きる可能性も指摘されています。それ故、「太陽地球圏環境」の変動は人類が想定すべき危険な自然現象であると共に、その発生と影響を正確に予測するための科学的な基盤を早急に確立することが求められています。
 また、太陽地球圏環境変動の原因となる太陽黒点活動は地球気候の長期的変動にも影響を与えていると考えられますが、そのメカニズムは未だに明確ではありません。このため、気候変動予測における太陽影響の評価には依然として大きな不確定性が残っています。
 

2)本領域研究の目的
 以上の背景により、我々が生きる太陽地球圏環境を正確に理解すると同時にその変動を正しく予測することは、科学的にも社会的にも重要かつ緊急の課題です。その解決のためには、太陽物理学、地球電磁気学、気象学・気候学及び関連する諸分野の専門家が密接に連携し、科学研究と予測研究を相乗的に発展させる新しい学術領域を構築することが必要です。本研究所副所長の草野完也教授を中心とする研究チームでは、そうした認識に基づき全国的な研究プロジェクト「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成」を提案してきましたが、同プロジェクトは本年度、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究(研究領域提案型)として採択されました。
 研究チームでは以下の2つの目的を実現するため、研究を直ちに開始しています。
 【目的1】科学的重要課題の抜本的解決:最新の観測と先進的な数値シミュレーションを融合することで、太陽フレアの発生とそれに伴う地球電磁気圏擾乱及び、太陽周期活動の変動とその気象気候影響など、これまで長年その物理メカニズムを特定することができなかった科学的重要課題の多くを抜本的に解決します。さらに、従来の経験的予測を超えた次世代宇宙天気予報の基盤を構築します。

 【目的2】社会基盤としての宇宙天気予報の飛躍的な発展:現在の宇宙天気予報は太陽フレアの最大エネルギーや地磁気変動指数など、現象の大まかな予測値を与えるものです。しかし、その社会影響がどこにどれほど現れるのかを的確に予報することはできていません。本研究では密接な分野横断研究を通して複合現象である太陽地球圏環境変動が社会システムに与える影響を、具体的に予報すると同時に、社会システムへの影響を定量的に評価し予報を検証することで観測システムと物理モデルの改善にフィードバックする双方向研究を実現します。これによって社会基盤としての宇宙天気予報を飛躍的に発展させることができます。さらに、これまで現代文明が経験したことの無い激甚宇宙天気災害の精密なシミュレーションを、本領域で開発する物理モデルを用いて初めて行うことにより、宇宙天気ハザードマップを作成し、現代社会の基盤整備に大きく貢献することができます。

3)さらに期待される成果
 本領域研究によって研究期間終了後に以下の成果も期待できます。
①宇宙天気災害と環境変動に対応する社会基盤の形成:物理モデルに基づく予報システムの基盤を構築することにより、日々の宇宙天気予報の信頼性を大きく向上させると共に、激甚宇宙天気災害と環境変動に対応する社会システムの設計指針を与えることができます。
②将来の宇宙探査への展開:本領域の成果は、我が国の次世代太陽観測衛星SOLAR-C計画、水星の環境を継続して観測する日欧協力計画「BepiColombo」、木星やその衛星の磁気圏、生命環境を探る欧州の「JUICE」計画など将来の国際的な太陽惑星圏科学ミッションの研究指針と設計に重要な貢献をするものです。また、惑星間空間の変動予測にも適用できるため、「はやぶさ2」、「あかつき」をはじめとした宇宙探査機の運用にも重要な役割を果たすことが期待できます。
③新たな予測研究への波及効果:科学研究と予測研究の相乗的発展を通して、複雑な時系列データから法則性を抽出する解析方法や高度な同化手法、予測結果の厳格な評価方法などが開発されます。こうした技術開発は太陽地球圏のみならず、様々な自然現象や社会経済活動の予測にも応用できることから、学際的な予測研究の推進に多くの波及効果を期待できます。また、本研究で開発整備する地球システムモデルを用いて、次期IPCC評価報告書に向けた世界気候研究計画(WCRP)の結合モデル相互比較実験(CMIP6)に積極的に参加し、本研究で中心的にとりあげる成層圏オゾンや低層雲雲核の変動を介した気候変動予測に積極的に貢献することができます。

4)本領域研究の概要
・研究領域名:「太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成」
・研究領域代表者:草野完也(名古屋大学太陽地球環境研究所 副所長・教授)
・計画研究班:
 A01 次世代宇宙天気予報のための双方向システムの開発(予報システム班)
   代表者:石井守(情報通信研究機構)
 A02 太陽嵐の発生機構の解明と予測(太陽嵐班) 
   代表者:一本潔(京都大学)
 A03 地球電磁気圏擾乱現象の発生機構の解明と予測(地球電磁気班)
   代表者:三好由純(名古屋大学)
 A04 太陽周期活動の予測とその地球環境影響の解明(周期活動班)
   代表者:余田成男(京都大学)
・参加研究機関:名古屋大学、京都大学、情報通信研究機構、宇宙科学研究所、国立天文台、電子航法研究所、電気通信大学、東北大学、九州大学、武蔵野美術大学、気象研究所など
・研究期間:平成27年度~平成31年度(5年間)
・事業名:文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)

5)本領域研究に関するお問い合わせ:
名古屋大学太陽地球環境研究所 副所長・教授 草野完也
TEL:052-747-6337 FAX:052-747-6334
E-mail:kusano@nagoya-u.jp

資料:
平成27年度科学研究費補助金「新学術領域研究(研究領域提案型)」新規の研究領域について(文部科学省のページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/kenkyuryouiki/1359368.htm

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