名古屋大学太陽地球環境研究所

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宇宙天気予報に新しい手がかり

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【概要】

 国際宇宙ステーションの高度から、ひまわり衛星などが運用されている静止軌道付近までの宇宙空間には、エネルギーの高い電子(宇宙放射線)が大量に存在しており、放射線帯と呼ばれています。この放射線帯の電子の数が増えすぎると、気象衛星や放送衛星の障害がおこりやすくなります。放射線帯の電子の数は、宇宙嵐と呼ばれる擾乱現象のときに10~100倍以上大きく増えますが、電子の数が増える条件はわかっていませんでした。当研究所の三好由純准教授らのグループは、「あけぼの」衛星等の長期観測データを用い、放射線帯の電子の数を増やすために必要な太陽風の条件を明らかにしました。この結果は、宇宙天気予報の精度向上に貢献し、人工衛星の安全な運用につながることが期待されるものです。この成果は、米国地球物理学連合の発行する速報論文誌「Geophysical Research Letters」に、2013年9月25日に掲載されました。

 

【背景】

 国際宇宙ステーションの高度から、ひまわり衛星などが運用されている静止軌道付近までには、放射線帯と呼ばれる宇宙放射線が存在しています。この放射線帯にある電子の数が増えすぎると、気象衛星や放送衛星の障害がおこりやすくなります。過去には、電子の数が増えた際に、米国の通信衛星が障害を起こし、その後数か月間、復旧しなかった例なども報告されています。したがって、放射線帯の電子がいつ、どのくらい増えるのかを予測することは、人類が宇宙を安全に利用するために重要です。

 地球を取り巻く宇宙空間は、しばしば太陽からのプラズマの嵐(宇宙嵐)に見舞われ、このとき放射線帯の電子の数が10倍から100倍以上に増えることが知られています。しかし、宇宙嵐がおきると、必ず電子の数が増えるというわけではありません。このようなことから、宇宙嵐と電子の数の関係性は複雑であり、どのようなメカニズムによって電子の数の変化が決まっているのかわかっていませんでした。

 

【研究の内容】

 研究グループは、「あけぼの」衛星等の人工衛星の長期観測データを用いて、地球にやってくる太陽風とエネルギーの高い電子の関係を統計的に解析しました。その結果、1)宇宙嵐時に電子の数が増えるためには、スピードの速い太陽風の中に南向きを向いた磁場が含まれていること、2)このとき数日間にわたって「コーラスと呼ばれる宇宙の電波」が強く発生しやすい状況になり、電子の数が増えることを示しました。スピードが速く、南向きを向いた磁場が含まれているときには、80%以上の確率で電子の数の増加が起こります。また、このような状態のときには、オーロラの活動も数日間にわたって活発になっています。

 

【成果の意義】

1)宇宙天気予報の新たな手がかりとなる成果:本研究の結果から、放射線帯の電子の数の変化を予測し、宇宙天気予報の精度向上に貢献することが期待されます。

2)長寿衛星「あけぼの」ならではの成果:本研究は、世界でもっとも長く24年間にわたって放射線帯で観測を行っている「あけぼの」衛星の長期データによって初めて可能となったものであり、日本の人工衛星のユニークな成果です。

3)2015年度に打ち上げられる「ジオスペース探査衛星(ERG)」につながる成果:放射線帯の電子が増える仕組みの詳細を解明することを目的として、2015年度にイプシロンロケット2号機で日本の科学人工衛星「ジオスペース探査衛星(ERG)」が打ち上げられます。本研究の「あけぼの」長期データを用いたの統計的な解析の結果により、ジオスペース探査衛星による素過程の発見に向けた観測計画の立案にも大きな貢献が期待されます。

 

【論文名】

題目:

High-speed solar wind with southward interplanetary magnetic field causes relativistic electron flux enhancement of the outer radiation belt via enhanced condition of whistler waves

著者:

三好由純(名古屋大学)、片岡龍峰(国立極地研究所)、笠原禎也(金沢大学)、熊本篤志(東北大学)、長井嗣信(東京工業大学)、M. Thomsen(米国ロスアラモス国立研究所)

掲載誌:米国地球物理学連合速報誌:Geophysical Research Letters

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/grl.50916/abstract

 

リンク:

名古屋大学のプレスリリース

http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20130925_stelab.pdf

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