名古屋大学太陽地球環境研究所

  1. ホーム
  2. 最新の話題
  3. 2013年
  4. 詳細

太陽の超微細電波バーストを捉える

 【概要】

 名古屋大学太陽地球環境研究所は、東北大学および国立天文台との共同研究により、太陽電波望遠鏡AMATERASによる観測と、そのデータの詳細な解析から、太陽で発生する I 型と呼ばれる超微細電波バースト現象の検出に成功しました。その結果、 I 型バーストの電波強度はべき状分布し、そのべき指数は4~5であることが明らかとなりました。観測されたべき指数は、既存のどのモデルでも説明できないほど大きな値であり、今後、この電波バーストやそれを引き起こす爆発現象の理解に役立つことが期待されます。

 

【研究の内容】

 太陽大気は100万度にも達する高温の大気「コロナ」に覆われています。コロナはあまりにも高温であるため、ほとんどの粒子がイオンと電子に電離したプラズマと呼ばれる状態で存在しています。このプラズマが、太陽の強力な磁場と交わり「フレア」に代表される爆発を繰り返し起こしています。コロナでの爆発現象よって周辺の電子は急激に加速され、その影響で突発性の電波を放射します。これは電波バーストと呼ばれ、太陽面での爆発現象に伴い、様々な電波バーストが放射されることがよく知られています。

 今回注目した I 型と呼ばれるバーストは最も頻繁に観測される電波バーストですが、現象1つ1つの継続時間は1秒未満と非常に短く、数千数万という単位で無数のバーストが同時多発的に発生し、複雑な変動を見せます。そのため、 I 型バーストの詳細は今までよく分かっていませんでした。

 今回の研究では、東北大学が中心となって近年開発した新型太陽電波望遠鏡「AMATERAS(アマテラス): http://pparc.gp.tohoku.ac.jp/data/iprt/index.html」を用いた太陽電波観測を実施しました。AMATERASは同様の太陽電波望遠鏡では世界最高の感度・分解能を持ち、継続時間の短い電波バーストの検出に優れています。更に、同時多発的に発生する短時間バーストを自動検出し分解・解析する特殊な計算アルゴリズムを新たに開発し、電波バーストの解析に用いました。観測の結果、2011年1月26日に I 型バーストを検出し、その微細な構造の分解に成功しました(図1)。

 バーストの強度別の発生頻度分布を作った結果、 I 型バーストは、フレアに代表される爆発現象と同様にべき状分布していることが分かりました。しかし、そのべきの傾き(べき指数)は4~5であり、一般的な太陽面の爆発現象(2以下)と比べて非常に傾きが急峻であることが新たに発見されました(図2)。このべき指数は通常の太陽面爆発を説明するために作られた、いかなるモデルも予想していなかったものです。今までの爆発モデルでは説明できない電波バーストの発見は、未知の爆発過程の発見につながる可能性を秘めています。今後、電波バーストやそれを引き起こす爆発現象の理解に役立つことが期待されます。

 

【解説図】


fig1-20130508.png 図1: AMATERASで観測された I 型バーストのスペクトル。横軸は時間(秒)、縦軸は電波の周波数(Hz)。継続時間が1秒を下回る電波放射が同時多発的に発生している。黒の菱型は検出されたバーストのピーク強度を示している 

 

fig2-20130508.png

図2: I 型バーストの電波強度のヒストグラム。横軸は電波強度、横軸はバーストの検出回数。グラフは両対数表示であり、直線で近似できることは、 I 型バーストの電波強度が「べき状分布」していることを示している。

 

【発表論文】

発表雑誌: The Astrophysical Journal Letters誌 5月1日掲載
論文題目: Peak Flux Distributions of Solar Radio Type-I Bursts From Highly Resolved Spectral Observations
著者: 岩井一正(国立天文台)、増田智、三好由純(名古屋大学)、土屋史紀、森岡昭、三澤浩昭(東北大学)

« “最新の話題” 2013年の一覧へ戻る

Copyright ©2010 Nagoya University All Rights Reserved.