名古屋大学太陽地球環境研究所

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名古屋大学の大型短波レーダー装置が2011年東北地震後に超高速で伝搬する電離圏の振動を観測

【発表概要】 名古屋大学太陽地球環境研究所が北海道陸別町において運用している大型短波レーダー装置が2011年3月11日の東北太平洋沖地震後にオホーツク海上の電離圏内を伝搬する各種の振動を観測しました。電離圏擾乱変動はGPS受信機網データで観測されていることは過去の新聞記事等で報告されていますが、今回大型短波レーダー装置を用いて、GPS受信機網などでは捕らえられない超高速(6.7 km/s)で伝搬する変動も観測することに初めて成功しました。地震に伴う上記波動を常時継続して監視することにより、観測点を設置することが困難な海上を含めて地震に伴う擾乱の広域変動をモニタリングすることが可能になると期待できます。本研究の成果は日本の地球惑星科学専門誌「アース・プラネッツ・スペース」(2012年12月号)に掲載される予定です。

【背景】 名古屋大学太陽地球環境研究所は平成18年度に北海道陸別町の陸別観測所に設置した大型短波レーダー装置(表1、図1、図2)により、電離圏における様々な変動の観測を継続して行い、太陽エネルギー放射の変動が地球環境に影響を与えるメカニズムの解明を進めています(図3)。大型短波レーダーの国際ネットワークであるSuperDARN計画は現在12カ国(日本、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、フィンランド、スウェーデン、アイスランド、オーストラリア、南アフリカ、中国)の国際協力の下に進められており、本計画の短波レーダーはこのSuperDARN計画に参加して重要な役割を果たしています。近年は地震等の地表面における擾乱現象が電離圏変動を引き起こすことがGPS受信機網などによる観測で明らかになりつつあり、地表変動と電離圏擾乱の間の関係に関する研究が注目を浴びています。本短波レーダー装置はこのような研究にも威力を発揮することが期待されていました(図3)。

【研究の内容】 名古屋大学太陽地球環境研究所の西谷望(にしたにのぞむ)准教授(太陽地球環境物理学)をリーダーとする研究チームは、名古屋大学太陽地球環境研究所の大型短波レーダー装置と日本国内GPS受信機網のデータを活用し、2011年東北太平洋沖地震に伴うオホーツク海上の様々な電離圏変動の特性を詳細に調べました(図4に震源と大型短波レーダーの観測視野を示しています)。その結果、GPS受信機網では捕らえられない超高速(6.7 km/s)で伝搬する変動も存在することが初めて発見されました(図5、図6)。GPS受信機網と大型短波レーダーの観測データにおける様々な擾乱現象の見え方の違いは、観測法や観測している物理量が異なることによるものと考えられます。

【成果の意義】 大型短波レーダーによる観測により、GPS受信機網で捕らえられない高速で伝搬する擾乱現象を捕らえられることが判明しました。これは、大型短波レーダーが観測点の設置が困難な海上を含む広域において、地震に伴う様々な擾乱の詳細なモニタリングに活用できる可能性を示すものであり、極めて重要な研究成果であると言えます。

使用周波数:8-20MHz 
時間分解能: 1秒~2分
ビーム幅(水平方向): 約5度
ビーム幅(鉛直方向): 約40度
最大到達距離: 約3500 km
最大瞬間出力: 10kW(平均出力: 約250W)
空間分解能: 15 km~約100 km
 ビーム方向: 水平方向に16チャンネル
パルス幅: 100~300 マイクロ秒

表1: 大型短波レーダー装置の仕様

 

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図1:北海道陸別町に設置した大型短波レーダーの観測視野図。国外の他のSuperDARNレーダーの視野も示してある。点線は建設準備中の第二大型短波レーダーの視野である。

 

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図2:大型短波レーダーシステムの概観図。右奥方向に電波を発射する。

 

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図3 大型短波レーダーにより諸現象を観測する模式図。

 

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図4 2011年東北太平洋沖地震の震央と北海道陸別町の大型短波レーダーが観測している視野の位置関係。扇形の円周に書かれている番号がレーダーの電波を発射する方向(ビーム番号)になる。GPS受信機網は日本国内1200点以上に設置されている。

 

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図5 大型短波レーダーで観測した2011年東北太平洋沖地震に伴う電離圏の振動の様子。横軸が時刻、縦軸がレーダー装置から震央とほぼ反対方向(図4に描くビーム番号4の方向)に沿った距離である。地震の発生時刻は14時46分23秒である。15時頃以降、電離圏のプラズマを上下方向に激しく揺さぶる振動が最大秒速6.7kmで伝わっていく様子が示されている。

 

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図6 図5とGPS受信機網により観測した電離圏電子密度変動分布を重ね合わせた図。上段が大型短波レーダーで観測した2011年東北太平洋沖地震に伴う電離圏の振動の様子、下段がGPS受信機網により観測した電子密度変動の様子である。横軸が時刻、縦軸が震央からほぼ反対方向に沿った距離である。大型短波レーダーで観測された最大秒速6.7kmで伝わっていく振動がGPS受信機網では観測されていないことがわかる。

 

【論文名】
題目:Giant ionospheric disturbances observed with the SuperDARN Hokkaido HF radar and GPS network after the 2011 Tohoku earthquake
著者:小川忠彦(名古屋大学)、西谷望(名古屋大学)、津川卓也(情報通信研究機構)、塩川和夫(名古屋大学) 
掲載誌:Earth, Planets and Space (2012年12月号予定)
(1/31追記: なお、当該論文は
Ogawa, T., N. Nishitani, T. Tsugawa, and K. Shiokawa, Earth Planets Space, 64, 12, 1295-1307, 2012.
として掲載されることが決定しました。)

【研究チーム】
西谷望 名古屋大学太陽地球環境研究所 准教授
小川忠彦 名古屋大学 名誉教授
津川卓也 情報通信研究機構 主任研究員
塩川和夫 名古屋大学太陽地球環境研究所 教授

【謝辞】
本研究は文部科学省特別教育研究経費「ジオスペースにおけるエネルギー輸送過程に関する調査研究」、日本学術振興会国際交流事業日露二国間共同研究「日本北方・シベリア域における電離圏擾乱研究手法の開発(研究代表者:西谷望)」の支援を得て行われました。

【問い合わせ先】
名古屋大学太陽地球環境研究所
准教授 西谷望
TEL:052-747-6345
FAX:052-789-5891
E-mail:nisitani@stelab.nagoya-u.ac.jp

【用語説明】
電離圏: 高度90-1000kmにおいて、電離した大気が豊富に存在する領域。
短波レーダー: 短波帯の電波を電離圏に向けて送信し、戻ってくるエコーを受信することにより、電離圏の変動を広域にわたって高時間分解能で観測するレーダー装置。 

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