名古屋大学太陽地球環境研究所

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高感度宇宙放射線測定装置、メキシコに上陸

 本研究は、4,600m 高山に高感度宇宙放射線計測装置を設置し、(1) 太陽表面で生成された高エネルギー(>100MeV)中性子を検出することにより、太陽表面における、高エネルギー粒子加速機構を解明すること、および(2) GLE (Ground Level Enhancements) と呼ばれる地上での宇宙線増加の入射角分布を調べることにより粒子加速機構や惑星間磁場の構造を理解することを目的とします。本研究では、加速器でのニュートリノ振動実験や、ニュートリノ-原子核散乱断面積の高精度測定実験に用いられ、シカゴのフェルミ加速器研究所にあった検出器を宇宙線検出器として用います。この検出器では計15,000チャンネルもの情報から粒子の飛跡を詳細にとらえることができ、入射粒子のエネルギー・方向や粒子の種別の詳細を知ることができ、宇宙線検出器としては類を見ない高精度な検出器となっています。本研究は、SciBar と呼ばれるこの検出器を宇宙線(Cosmic Ray)研究に用いることからSciCR と呼ばれていて、すでにSciBar を開発した京都大学・高エネルギー加速器研究機構のグループからは検出器の宇宙線研究への利用について内諾を得ていました。

 平成22年度になり、本研究はいよいよ実現に向けて動き出すことになりました。SciBar をメキシコの4,600m 高山のシェラネグラに設置し、太陽中性子観測と宇宙線ミューオンの強度変動を調べることを目的とします。中性子は大気中で減衰するので赤道付近の高山であるシェラネグラは太陽中性子の観測に最適です。また、宇宙線ミューオン計の世界観測網がまだ整備されていないところなので、宇宙線強度観測の点でも重要な観測点となります。

本計画は、まずSciBar をシカゴからメキシコの平地に送り、宇宙線のデータが取れることを確認してからシェラネグラに設置します。その前に、データ取得システムが、気圧が平地の60%以下である高山できちんと動くかどうか調べないといけません。また、データ取得システムを最適化するために、現地での宇宙線粒子の分布も知っておく必要があります。

これらの目的のために、平成22年10月に試作機(mini-SciCR)をメキシコに送り、シェラネグラで宇宙線データ取得を開始しました。本実験が15,000チャンネルであるのに対し、mini-SciCR は128チャンネルしかありませんが、本番と同じデータ収集系を用いています。宇宙線のデータを正常に取得することに成功し、現在山の上で長期運転の試験中です。2011年2月-3月にはシカゴでSciBarの解体を行い梱包、陸路でメキシコに輸送しました。4月13日に無事に荷物が、メキシコのプエブラにあるINAOE(国立天文光学電気研究所)に到着しました。本検出器は2011年度中にINAOEで宇宙線のデータ取得を開始し、2012年度中にシェラネグラでの観測を開始する予定です。

担当 松原豊 准教授
名古屋大学太陽地球環境研究所

 

図1: 高感度宇宙放射線計測装置による太陽中性子観測の概念図。

図2: メキシコの研究所INAOEに到着した高感度宇宙放射線測定装置の部品(木箱梱包)と現地メンバー達。

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