名古屋大学太陽地球環境研究所

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巨大粒子加速器を用いた宇宙線・地球大気衝突検証実験LHCf、第一期測定完了

 スイス・ジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究機構(CERN) は、素粒子物理学の標準理論を検証するために、2009年末から大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の運転を開始しました。LHCでは数千人の研究者が集まり、巨大な検出器を建設して新粒子の探索を行っています。太陽地球環境研究所をはじめとする国際共同研究グループは、このLHCを用いた独自の小型実験(LHCf)を提案、CERNの承認を受けLHCの稼働と同時にデータ収集を開始しました。LHCでは高エネルギーに加速した陽子や原子核を正面衝突させて、新たに作られる粒子を検出します。LHCf 実験(fはforward, 前方の意味)は特に最前方の放出される粒子の測定に特化した測定を行います。
 衝突の際、最前方に放出される粒子を理解することは、宇宙線と呼ばれる高エネルギーの粒子が地球の大気中でおこす現象を理解するために非常に重要です。宇宙線の中には、人類が作り出すことができないほど高いエネルギーをもつ粒子がいます。これらの宇宙線は我々の銀河系の外の銀河における巨大な星の爆発や、ブラックホールの周辺で発生していると考えられていますが、詳しいことはまだわかっていません。1平方kmに1年に一個しかやってこないこれらの宇宙線を効率よく観測するために、われわれは宇宙線と大気が衝突した破片が地上に降り注ぐ様子(空気シャワー)を観測します。破片の観測結果から、元の宇宙線の正体をわりだすためにはLHCfの測定結果が必要になります。
 LHC加速器は2010年3月に人類未踏の粒子エネルギーを達成し、安定運転に入りました。LHCfは2010年7月まで測定を継続し、十分なデータを蓄積して測定を終了しました。LHCがさらにエネルギーをあげる2013年以降に第二期の測定を行うまでは、これまでにとられたデータの解析を行います。さまざまな理論モデルによってLHCfの結果を予想すると、モデルによって予想に大きな差がでます。つまり、LHCfの測定結果によって、モデルの優劣が判断できるわけです。どのモデルが正しいのか、あるいは、誰も予想しなかった結果になるのか。答えがでるのはもうすぐです。

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図1:宇宙線が地球大気の中で空気シャワーを発達させる様子(CERN製作、LHCfパンフレットより)

 

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図2:低エネルギー衝突におけるLHCfの測定結果の一例(黒十字)。さまざまな理論モデル(カラー)の違いを判定できることがわかる。このデータと高エネルギーのデータはともに世界初・唯一の測定であり、間もなく最終結果を発表する。

 

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図3:最初の高エネルギー衝突データに見入るメンバー達

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